モノクロを撮り始めたきっかけを思い起こしてみると、
この写真を撮った旅行だった。
91年から92年にかけて、年末年始の休みを利用し、
ドイツ、フランス、イギリスを旅行した時の写真である。
この時の機材は、CONTAX T2のみ。
当時は今ほど写真を撮っていなかったし、
この旅行は写真が目的ではなかったので、
軽くて、かさ張らないコンパクトカメラにした。
ただ、カラーフィルムに加えて、
なんとなくモノクロフィルムを数本だけ持って行ったのである。
その理由は「冬のヨーロッパはモノクロが似合いそう」という
気分的なものだったと思う。
ところで、私の幼い頃は写真といえばモノクロだった。
小学生の頃、最初に撮った写真もモノクロである。
小学校の高学年あたりから、だんだんモノクロより
カラーがメジャーになっていった気がする。
モノクロは古く、カラーは新しい、そんな時代背景もあり、
学生時代に撮っていたのは、ほとんどカラーで、
モノクロで撮った記憶はあまりない。
だから、この旅行にモノクロフィルムを持っていったのは、
本当に気分的なものだった。
旅行から帰ってきて、同時現像に出したところ、
モノクロで撮った写真に何枚か気に入ったのがあり、
キャビネサイズに焼いてもらうことにした。
当時、新宿の甲州街道沿いにあったイマジカの営業所へ行き、
手焼きでお願いした。
上がってきたプリントは、黒がよく締まっていて、諧調も美しく、
同時現像のものとは全く違う印象だった。
プリントによって、こんなに変わるものかと思った。
それに、白と黒の諧調だけの世界も美しいではないかと。
これがモノクロとの邂逅だった。